閉じる

今年はすでにインフルエンザによる学級閉鎖がニュースで伝えられています。
 厚生労働省は、タミフルと異常行動との因果関係は不明としながらも、2007年3月20日、緊急安全性情報にて、タミフルの使用を10代には原則として差し控えることを通知し、同時に2007年のインフルエンザシーズンまでに対策を確定させるとして基礎的調査検討ワーキンググループ(基礎WG)と臨床的調査検討ワーキンググループ(臨床WG)による調査検討を指示しました。シーズンが近づく中、11月11日にWGの調査検討状況を報告する安全対策調査会が開催されました(公開)。
安全対策調査会に先立って、基礎WGにて、タミフルの販売メーカーである中外製薬は、基礎WGの指示に基づいて実施した基礎的試験(非臨床試験)結果について、「タミフルの中枢神経系への悪影響を示す成績は得られていない」と報告し、マスコミでは、「タミフルが脳に影響を及ぼす可能性は低いとしている」と報道されました。
 しかし、11月11日の安全対策調査会で報告された非臨床試験結果では、以下のように、いくつかの重要な内容が明らかにされています。|輒椶気譴詛焼眷仕戮砲弔い討老覯未出ていないとして、脳脊髄液の濃度を脳内濃度と同程度と仮定して脳内濃度は低いと結論付けている。WGから、脳脊髄液濃度と脳内濃度は10倍くらいの違いがあり、このように結論付けることは正しくないと指摘された。▲織潺侫襪錬弌歸蛋白と結合して能動輸送されることが実験で証明され、タミフルの脳内濃度が低い理由としてP−糖蛋白によって脳から排泄されることが確認された。このことは、P−糖蛋白が不十分な場合にはタミフルが脳内に蓄積するという予想を裏付けることになる。タミフルの脳内ノイラミニダーゼに対する作用*が問題になっているが、ラット脳内組織を使った試験ではタミフル濃度の上昇にともなってノイラミニダーゼ活性は低下している。この試験を中外製薬は「10mMの濃度まで、ノイラミニダーゼに対して有意な阻害作用を示さなかった」と結論付けた。いみじくもWGはさらに高い濃度までの試験をおこなうことを指示した。
このように、非臨床試験結果ではタミフルの脳内移行とその作用が推定できる重要な結果が示されていると判断できます。中外製薬からの試験結果として報道された内容は、メーカーの都合の良いように解釈した結論であるといえます。
 一方、この9月から10月にかけて、タミフルの脳細胞を使用した研究結果が相次いで公表されています。ひとつは、タミフルに脳細胞を興奮させる作用があることを、米国ワシントン大学の和泉幸俊教授らがラットによる実験で明らかにしたというものです(ニューロサイエンス・レターズ;2007年10月9日)。また、タミフルの脳内濃度に関与していると考えられているP糖蛋白に関して、P糖蛋白をもたないマウスでは脳内タミフル濃度が高かったとする2つの研究結果が報道されています。そのうちの1つの試験では幼いラットほどP糖蛋白の量が少ないことを確認したとされています(読売新聞2007年10月30日付)。
 安全対策調査会の論議の中で、医師委員から厚生労働省への要望として、「医師は患者からタミフルを希望され、説得できなくて処方する現状がある。通常の健康な人にはタミフルは必ずしも必要ではないことを添付文書にわかりやすく記載し、市民に理解されるよう啓蒙して欲しい」との発言がありました。タミフルが2001年2月に販売開始されて以後日本の医療現場では、インフルエンザが疑われたら“ウイルス検査にてインフルエンザ感染を診断し、タミフルにて治療する”ことが定着しきっており、タミフルを処方しないという行動を貫くことが難しいのが実状です。
 様々な試験結果が明らかになっている中、インフルエンザシーズンまでにどのような対策が確定されるか注目されますが、新たな飛び降り事故や突然死などが1例も繰り返されることがないことを願います。医療現場ではタミフルに頼るのではなく、保温と安静を促す指導を第一とし、やむを得ず処方する場合には見守りを徹底しましょう。
*タミフルの作用機序はインフルエンザウイルスのノイラミニダーゼを選択的に阻害することによりウイルスの増殖を抑えるとされているが、脳内細胞に存在するノイラミニダーゼに対してもタミフルが作用し、異常行動に関係しているのではないかと考えられている。

閉じる