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自民党が歴史的敗北をした7月30日,作家の小田実が亡くなった。ベストセラー「何でも見てやろう」で一気に惹きつけられ,彼の率いる「ベ平連」のデモに参加し,いつの間にか学生時代の私に最も影響を与えた人物となった。
 小田実の市民運動の「原風景」をなしたのは,少年時代の大阪空襲であった。焼け野原で見た焼死体はどんな名誉とも無縁の惨たらしい死であった(毎日「余録」)。
 地面を這いまわる虫の目に映る世界に執着する「虫瞰図」という彼の造語と,肩書きや立場で人を評価することを戒める「人間ちょぼちょぼ主義」は私の座右の銘である。
状況を俯瞰する鳥瞰図も勿論大事だが「虫瞰図」を忘れて,人権を守ることはできない。川田龍平君は自己の体験を元にした「虫瞰図」で勝負し見事当選した。
 安倍総理の演説が聴衆の胸を打たなかったのは庶民の「虫瞰図」に思いが及ばなかったからであろう。
 虫の視点は時として,鳥の視点を越えることがある。そのことを教えた開票の夜であった。

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