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薬害肝炎東京訴訟は、02年10月の提訴から約4年半、来たる3月23日に判決が言渡されます。昨年、先駆けて出された大阪・福岡判決に続く、全国3番目の判決です。
 6月21日の大阪判決は、フィブリノゲン製剤(F製剤)について、国には87年4月以降の、製薬企業には85年8月以降の責任を認めました。87年4月は、(1)青森県三沢市のF製剤集団肝炎感染が社会問題となり、(2)再評価手続で適応限定の内示が出されようとしている時期、85年8月は、ウイルス不活化処理方法が変更された時期です。
 これに対し、8月30日の福岡判決は、大阪判決をさらに前進させ、国と製薬企業について80年11月以降の責任を認めました。福岡判決は、77年12月の米国FDA(食品安全局)によるF製剤の承認取消し情報を重視し、翌78年1月にはF製剤の有用性を調査検討すべきであり、遅くとも80年11月までに、被告らはF製剤の適応限定・販売中止・回収等の措置を取るべきであったとしました。
 大阪・福岡で、年代別線引き論とはいえども勝訴したことは、大きな意義がありました。もっとも、両判決とも、危険性については、肝炎の重篤性に関する知見の「確立」を求める等、厳格な立証を求めたのに対し、有効性については、臨床試験の結果ではなく、臨床現場の使用実態を重視した緩やかな立証を認めており、製剤の有用性評価についてバランスを欠いた判断であることは否めません。東京判決では、有用性についてどのような判断枠組みを取るのかが注目されます。
 第IX因子製剤については、大阪・福岡判決は、原告の主張を受け入れませんでした。昨年8月1日に結審した東京訴訟では、原告は、大阪判決の反省を踏まえ、後天性疾患に第IX因子製剤の有用性が認められないことについて事実主張を拡充するとともに、肝炎の危険性に対する警告義務違反についても強調しました。東京判決では、第IX因子製剤についても勝訴し、完全勝利を目指しています。

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