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現在厚生科学審議会のもとで進められている「医薬品販売制度改正検討会」の中心課題は、一般用医薬品のリスク分類を実施し、それに基づく実効性ある販売制度を打ち立てることです。この課題の背後には、一般用医薬品市場の伸び悩み、チェーンドラッグストア業界(=薬剤師の対面販売を打ち崩し、医薬品の大量廉売を常態化した)が提案している「医薬品販売士」の導入、大手スーパー・コンビニ業界(チェーンドラッグストアとシェアーを競い、医薬品の24時間販売をめざしている)が要求している、風邪薬等最も需要が高い医薬品の販売規制緩和等が見え隠れしています。また、薬学教育の6年制が閣議決定され、今後の薬剤師の位置づけもからんでいるといえます。
 問題点の一つは、検討会で議論になったリスク分類に関する考え方です。現在リスク分類を進めている専門委員会では適正使用を前提にしたリスク評価を行うことが確認されました。しかし、医薬品による事故や健康被害は不適切な判断や使用でこそ発生する場合が多く、制度改正の焦点である「適切な情報提供」の目的も、如何に適切に薬を使用し、事故や健康被害を防ぐかにあります。従って、適切な情報提供の内容や方法を定めることが制度改正の中心点であり、そのためのリスク評価であれば、不適切な判断や誤使用も含めてリスクを評価すべきです。
もう一つの問題点は医薬品の販売方法についてです。検討会の趣旨には、「リスクの程度に応じて、専門家が関与し、適切な情報提供等がなされる実効性のある制度を構築するため」と掲げられていますが、「リスクの程度に応じて、専門家が関与し」という表現の裏には、リスクの程度によっては、薬剤師が関与しない販売方法、たとえば医薬品販売士という職種の導入、あるいは、医薬部外品のように全く規制を取り払うことも考えられます。
本来医薬品は使用者の体に何らかの薬理学的作用をもたらす化学物質であり、効果と同時に副作用が伴うことを今一度明確にしておく必要性を感じます。売らんがための販売士の導入や、日用品や食品の販売と医薬品販売を同列視して販路を拡大しようとする規制緩和は、医薬品の基本を無視していると言わざるを得ません。
薬剤師の配置を定めた現行の薬事法を基本に、リスクに応じた情報提供の内容と方法を明確にし、法的に義務化することが適切な情報提供の実効性につながると考えます。
その他、法的整備上の問題として、リスク分類に基づいて、薬種商、配置販売業、特例販売業等における販売品目の見直し、長期的にはその存在の是非もふくめた許可基準の見直し、インターネット販売やカタログ販売に関する法的整備の課題があります。これらも同時に整備されないことには、一般用医薬品販売のあり方全般の見直しに至らないのではないでしょうか。

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