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 薬害オンブズパースンタイアップグループが10月12日に結成された。パースン会議を人的、物的に支援し、その成果を利用し、薬害防止のために自ら行動する全国規模の市民集団である。不肖私が代表となり、古賀克重弁護士(福岡)、高橋直紹弁護士(名古屋)、渡辺達生弁護士(札幌)が副代表、野間啓弁護士(東京)が事務局長に就任した。
 パースン会議は6月8日に発足し、毎月1回の例会を軸に精力的に活動しており、メンバーは繁忙を極めている。最初に取り上げたベロテック1つにしても、ベロテック班は、厚生省・ベーリンガーインゲルハイム社への申し入れ、全国から寄せられる患者からの質問への回答、規制に反する患者や医師に対する説明、製薬企業からの逆質問への回答、厚生省の口頭による回答の分析等々、次々に降りかかってくる課題に翻弄されている。ベロテック班以外の班も同様だ。とても20人のパースン会議で手に負える仕事ではない。パースン会議の調査班に加わって調査、研究の手助けをしてくれる専門職以外の人も各種イベントやニュースの発行を手伝うなど、一緒に活動する分野は沢山ある。もう一つに財政支援がある。パースン会議の向こう3年間の活動費は、東京HIV訴訟弁護団から拠出してもらったが、4年目以降は我々市民が自ら支える以外ない。3年間の間に財政の基盤を整えておく必要がある。
 人的物的支援以外にタイアップグループのもう一つの目的は、パースン会議の成果を利用し、タイアップグループ自らが薬害防止の活動の一端を担うことである。ベロテック、ヒト乾燥脳硬膜移植によるヤコブ病、塩酸イリノテカン、トリルダンと、パースン会議が取り上げた薬の数はまだわずかであるが、臨床試験のデタラメさ、承認後の再チェックのいい加減さは目に余るものである。しかもそうした薬務行政の欠陥が、病院や患者に全くといっていいほど伝わっていない。しかし、いざ薬害が生じると、病院は「厚生省が安全だとお墨付きを与えた薬を危険だと疑うわけにはいかない」と抗弁する。いい加減な薬のチェックと、いざとなると厚生省に責任を押し付ける病院とのもたれあいに風穴をあけるためには何が最も有効か。
 タイアップグループとしては、各地の病院の調査を継続的に行うことが最も有効であると考えている。薬害防止に向けての各病院の努力を市民の前に明らかにさせるとともに、パースン会議が取り上げた薬を今でも使っているのかどうかについて、各地のタイアップグループが全国一斉に各地の指導的病院にアンケートを行い、その結果を発表することを計画している。これがパースン会議の行動を実効化する最も有効な方法であると考えている。
 継続的調査と市民への公表は薬の危険性に対する各病院の認識度についてのランキングを生み、患者による病院の選択につながる。患者による病院の選択の動きは、病院内部に緊張感を走らせ、「薬の危険性についての情報をどのようにして医師、薬剤師に徹底させるか、どんな方法で患者に伝えるか」という工夫を生ませ、医師と患者、医師と薬剤師の関係の見直しにつながるであろう。
 タイアップグループは、今のところ札幌、仙台、東京、大阪、名古屋、福岡にまず支部を作り、HIV訴訟弁護団、支援の会、市民オンブズマンを核にメンバーを増やし、次第に支部を全国に広げていくことを考えている。

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