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 パナルジンをはじめとした塩酸チクロピジン製剤は、抗血小板剤として虚血性脳血管障害などに伴う血栓・塞栓の治療や慢性動脈閉塞症に伴う症状の改善等に使用されており、現在約20者が製造し、使用者は約100万人、現在販売高は年間約500億円と言われています。
 しかし、かなり以前からの国内外の様々な調査・研究により高い割合での副作用の発生が警告されていました。中には、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、無顆粒球症、および重篤な肝障害という重症の副作用もあり、死に至ることもあります。厚生労働省によれば、これまでに49名もの人が死亡しており(2002年7月24日時点)、この1年間(2001年7月から2002年6月)でも、TTP13例(うち死亡5例)、顆粒球減少(無顆粒球症を含む)35例(うち死亡6例)、重篤な肝障害97例(うち死亡6例)の重篤な副作用事例の報告がありました。
 しかも、塩酸チクロピジン製剤と同様の効能を有する薬剤としては、アスピリンがあります。アスピリンの効果は塩酸チクロピジン製剤と比較しても変わりなく、しかも副作用は少ないのです。その上、塩酸チクロピジン製剤の薬価は、アスピリンの約5〜80倍もします。
 しかし、こうした状況にあるにもかかわらず、厚生労働省の対策は、いずれも単なる注意喚起、医療機関への情報提供だけに過ぎませんでした。適応制限はおろか、厚生労働省自身が自ら同製剤の副作用被害の実態を調査・研究したり、患者に対する直接の情報提供をすることすらは全く行われていなかったのです。
 そこで、薬害オンブズパースン会議として、11月上旬に、厚生労働省に対して、
[1] 副作用症例の詳細とその分析結果、被害実態につき調査し、公表すること
[2] 塩酸チクロピジン製剤は、アスピリンが使えない場合に適応を限定すること
[3] 同製剤の必要性が限られたものである事や添付文書記載の「警告」や「使用上の注意」と同様の内容を患者用説明書を製薬企業に作成させるとともに、医師・薬剤師にはこうした情報を患者に周知徹底させること
を求める要望書を提出しました。

用語説明
塩酸チクロピジン:
血小板の作用を抑制して血栓ができにくくする作用により脳梗塞の治療などに使われる薬。日本では約100万人に投与されている。以前から重大な副作用が問題視されてきたが、2年前と去年7月の2回にわたって緊急安全性情報が出された。

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