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 医薬品の有効性と安全性に対する監視は、厚生労働省(医薬局)と医療現場と製薬企業の相互監視システムで成り立っている。監視の範囲は治験から始まって承認審査そして市販後へと及ぶ。医薬品情報の第一報は治験であれ、市販後であれ医療現場から発せられる。”効かない””危ない”の情報が医療現場から企業や医薬局に伝えられて全国の医療現場にフィードバックされ、対策が講じられる。
 繰り返された薬害の歴史は、この相互監視システムが機能不全に陥っていることを証明してきた。金やポストをめぐる癒着である。
 民間監視機関の存在意義もここにある。本来の監視システムを機能させるために企業、医薬局、医療現場を監視の対象とするわけだ。隠そうとする情報を外から引きずり出す。そのために医療機関、医薬局、製薬企業への情報開示請求が重要だ。
 民間監視機関である当会議は、有効性や安全性が怪しい個別薬の告発をするだけでなく、実態調査や癒着構造をはがすためのシステム改善の提言も行ってきた。しかしこれには限界もある。
 薬社会をより公正なものにするためには、重要な情報を持つ専門家が、法の保護の下に内部告発することが強く求められている。そんな折、宮本一子著「内部告発の時代」(花伝社2002年)が出版された。英国は1998年公益公開法(Public Interest Disclosure Act)を制定し、内部告発者を保護するシステムをつくったという。いま世界は、内部告発が社会の公正さを促進する、との認識に立っている。この1年の日本社会も、内部告発が次々にスキャンダルを暴き、組織の体質改善を求めはじめた。医薬品分野における内部告発のあり方を追及してみたい。
 薬社会を公正なものにするための第2の戦略は、医療消費者の”するどい目利き”を育てることにある。医薬品の有効性と安全性への疑問に関する情報公表は、必ずしも少なくはない。しかし、患者消費者は被害に会ってはじめてその薬の怪しさを知ることになる。遅すぎるのである。消費者の選択が医療専門家を動かし、怪しい薬を市場から追放するしくみをつくり出す必要がある。

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