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 2001年4月、私たちは、旧厚生省に報告された、正露丸クレオソート製剤の服用に伴う肝機能障害の副作用症例報告の情報公開請求を行いましたが、厚生労働省は、患者のプライバシーの保護等を理由に、該当文書である「医薬品副作用・感染症症例票」のうち、「患者の年齢」、「職業」、「症状及び処置等の経過等」、「担当医等の意見」など、症例報告として意味のある部分のほとんどを非公開(墨塗り)とする一部開示決定を行いました。これに対し、該当決定に対する異議申し立て手続において、学識経験者等で構成される「情報公開審査会」は、2002年4月12日、墨塗りとした部分の大部分を開示すべきとする答申を提出しました。薬事法は、製薬会社等に対し、承認を受けた医薬品の副作用と疑われる症例について厚生労働省に報告することを義務づけているため、厚生労働省には多くの副作用症例報告が蓄積されていると考えられます。これらの症例報告は、薬の安全性を検討する上で、きわめて貴重なデータです。
 ところが、これらの症例報告の分析・評価は全て厚生労働省が行い、厚生労働省が自ら公表した場合を除いて、一般市民が報告内容を知ることはできませんでした。しかし、薬害エイズ事件や薬害ヤコブ事件等、これまでの数多くの薬害事件の経験から、厚生労働省の薬の安全性に関する分析・評価能力には限界があることは明らかです。国民の安全確保に万全を期すためには、集積された副作用症例を公開し、民間の研究者等できるだけ多くの人々がその分析・評価を行うことができるようにすることが必要です。
 これまで、情報公開審査会は、別件の医療事故報告書の情報公開請求においては、事故の具体的内容に関する部分は非開示とすることを認めており、開示部分から、医療事故の再発防止のための分析を行うことは不可能となっていました。それに対し、今回の答申は、副作用症例の具体的内容にわたる部分まで開示すべきと判断しており、これが採用されれば、厚生労働省に対する症例報告を民間の研究者等が分析・評価する道が開かれることとなるもので、きわめて大きな前進であると言えます。
 そして、5月30日付にて、厚生労働大臣名の変更通知、すなわち、答申に従って文書を公開する旨の決定が出されました。情報公開法を利用して副作用情報にアクセスする具体的な道筋が明確になったと評価することができると思います。

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