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 去る10月22日、サリドマイド・スモン・HIV・陣痛促進剤・MMR・CJDの被害者及び支援8団体により「全国薬害被害者団体連絡協議会」が結成され、厚生・文部両省に要望書が提出された。文部省に対しては、「学校教育および生涯学習の場において、国民が薬害問題について確実に学習できるよう、必要な施策を講じること」、具体的には「公教育(小・中・高校)の場で、薬害問題についての学習がなされるよう学習指導要領等に明記すること」「高等教育においては、特に医学・薬学・看護学等、医療専門職を養成する学校での教育カリキュラムの中に、薬害問題に関する内容を盛り込むこと」「生涯学習の場で薬害問題に関する学習が行われるよう、必要な環境整備の実施ないしは支援を行うこと」の3点が要望された。そして、翌23日の集会では、これまでの学校教育では薬害教育が極めて不十分であることが、教科書の記述調査の結果から報告された(キノホルム1)や薬害エイズ2)のように、教科書検定後に削除された例すらある)。
 筆者は、1970年以来30年近くの薬害問題研究の過程で、研究のみならず教育も重要であることを考え、大学や消費者教育等の場で薬害教育に微力を尽くしてきた。
 しかし、大学の場合、全て非常勤講師で、その殆どが年1〜2回の「特別講義」でしかなかった。比較的多かった例でも、1996年度・東大での学生企画の自主ゼミ(単位となる)で12回、1999年度・東薬大での5回3)、1987年度以降・医歯大医学部での薬理学の講義(4〜2回)4)・実習(2週間)5)等にすぎない。
 医薬品に有害作用の側面があることは医系大学では薬理学等で総論・各論共に教育されている。しかし筆者が強調したいのは、そうした自然科学的な「副作用教育」だけでなく、社会科学的視点を含めた「薬害教育」が必要であり、そうでなければ、「薬害根絶」の課題は達成できないであろうということである。1970年頃「公害」が日本の重大課題になった時、「公害教育」の必要性が説かれたが、「薬害教育」もその必要性が説かれてしかるべきであろう。
 日本臨床薬理学会(会員数約1900人)では、1996年2月に「薬害検討委員会」を設け、「薬害防止のための教育のあり方」6)及び「薬害防止策の提言」7)をしている。また、社会薬学研究会(1999年10月より日本社会薬学会、会員数約350人)も1996年8月に「薬害防止対策委 員会」を作り、「医療・研究・教育機関のあり方について」を含む「薬害防止政策についての提言」をまとめている8)。これらの提言を汲んで、薬害被害者の願いのひとつである薬害教育の推進が関係者に求められている。

文献:1)ス全協ニュ-ス第52号、1981。2)毎日新聞、1999年6月25日。3)社会薬学研究会第18回全国総会講演要旨集、1999。4)日本薬学会112年会、1992。5)臨床薬理、27:137、1996。6)臨床薬理、28:801、1997。7)臨床薬理、30:649、1999。8)社会薬学、16:68、1997。

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