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米国の糖尿病専門家が製薬会社の‘脅迫’を議会で証言

2008-01-21

(キーワード:アバンディア、安全性への疑問、GSK、専門家への脅迫、上院委員会)

 米国で重大な心血管障害が問題となっている糖尿病治療剤アバンディア(※1参照)について、発売当時からその安全性について疑問を呈してきた専門家を、同剤の製造販売企業が脅かしていたという驚くべき事実が上院財政委員会で証言された。BJM誌2007年
12月1日号記事を要約して紹介する。
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 GSK(グラクソ・スミス・クライン)社の前研究開発部長タダタカ・ヤマダ医師が、2007年の上院財政委員会で、ノースカロライナ大学医学部ジョン・ブース教授への「脅迫」で果たした役割について説明するよう求められた。

 1999年ブース教授は、米国糖尿病学会が組織したシンポジウムで、GSK社の前身であるSKB(スミス・クライン・ビ−チャム)社の経口糖尿病治療剤アバンディア(ロシグリタゾン)の心血管安全性について疑問を呈した。これに対してSKB社上層部は、ブース教授の学問的業績にクレームをつけ彼の活動を支えている医学生涯教育(CME)奨学財団に苦情を言い立てるつもりである旨、会社の書簡でブース教授に警告するよう、ヤマダ医師にEメールした。これに応えヤマダ医師はブース教授に書簡を送り、彼が間違っていたことを認めるよう、名誉毀損で提訴もすると脅かした。またヤマダ医師は主任教授のスパーリング氏にも電話するなど、SKB社はさまざまな手段を使ってブース教授に圧力をかけ、精神的に追い込んだ。このため、ブース教授はSKB社が起案した「最初のコメントは誤解されやすい面があり、アバンディアなどこの系統の薬剤を正しく評価するにはより多くの患者の使用経験と比較臨床試験が必要である」という「関係各位宛」の書簡にサインをした。

 上院財政委員会は、2007年5月に、ブース教授に対するGSK 社(1999年当時はSKB社)の脅迫事件を取り上げたが、「全くの事実無根」と会社側は否定した。委員会報告書は「SKBは謝罪する代わりに、否定のための大宣伝を開始した」と述べている。
 委員会報告書をまとめたチャールス・グラスリー上院議員(共和党)は、このような例が他にもあるのでないかとして、製薬会社に脅迫された医学研究者たちに彼の事務所にコンタクトするよう呼びかけている。
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 公開されている上院財政委員会報告書(※2)を読むと、ブース教授は、表立ってそのリスクを訴えることをひかえた時期もあったが、専門家としての見解を撤回することはなかった。2007年のアバンディア安全評価委員会で、FDAの専門家が、この薬が市場に出回って以来、約83000件を超える心臓発作を引き起こしていると分析結果を発表した。GSK 社(当時はSKB社)が疑問を封じようとしたことは、深刻な影響を今日に与えているのである。
 また、報告書には2004年に、スタンフォード大学のシン医師が、メルク社の重役がシン医師の上司に電話をして脅迫したことを委員会で証言したことが書かれている。シン医師はメルク社のバイオックスのデータを要求し続けるなら、クビも覚悟しなければならないとメルク社から警告された。この薬は現在では市場から引き上げられている。GSK社とブース教授の例がメルク社の例と驚くほど類似しているので、委員会としては懸念を持ったのである。  (KN)